マーケターが読んでおくべき『ブランディングの科学』書評とまとめ
- 作者: バイロン・シャープ,加藤巧,前平謙二
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2018/07/06
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
かのP&Gに影響を与えたマーケティングの名著が遂に発売。コトラーなどのマーケティング主流派に異論を唱え、新しい視点からマーケティングやブランドの育成方法を提案する。コトラーを超える最新マーケティングの神髄。
めちゃくちゃおもしろかったから書きたいなーと思っているうちに読んでから数ヶ月経ってましたね。でもこれは簡単にでもまとめておかないといけないし、マーケティングを一緒にやる人には絶対読んでおいてほしいと思ったのでいまさらですが書いておきます。
「ブランディングの科学」の印象
読む前に「ブランディングの科学」というタイトルと本のデザインだけでは、入門的な本なのか学術的な本なのかなかなか判断が難しかったんですが、読んでみたら結果それらのバランスがちょうどいい。森岡さんの『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門』みたいな感じでしょうか。『確率思考の戦略論』は最初に読むのには難しいですよね。
なのでマーケティング関連の本を数冊読んでいたり、学問としてかじったことのある人、実務としてマーケティングやコンサルティングを行っているなどある程度の用語を理解しているとよりスムーズに理解ができるかなという本です。
「ブランディングの科学」で説明していることの概要
一般的に信じられているマーケティングの公式が本当にそうなのか?をデータや数字をもとに確認したり反論するってのがこの本の要旨なんですね。 意見1と意見2のどちらが正しいかというのはデータを十分に集めて検証しなければいけないので本当の結論は難しいのですが、読者としてマーケティングを扱うものとして理解しておくべきなのはマーケティング理論を疑うことの重要性なんですよね。 昔に教科書で読んだことやネットで事例として出てくるものに対して斜に構えるというか本質を考えることができるというのは重要な能力です。
ブランドに対する態度やロイヤリティは簡単に変わる
「新規顧客を獲得するより既存顧客の離反率を下げるほうがいい」とか「新規契約より継続率を最優先するべき」なんてのはマーケティング論でよく話されますよね。最近はファンマーケティングみたいなものが流行ったりと確かに言われてみれば既存顧客のリピートと紹介が顧客数拡大にとって大事な気もします。でもこう感覚的にそうかもしれないと思っていることに対して「それは本当か?」と考えるのがこの本です。
- 消費者がブランドと関係を構築するは本当か?
- ロイヤルティは意図して作れるのか?
こういった問いに対して『ブランディングの科学』ではこのような記述があります。
ブランド自体はそれほど重要ではなく、ブランドの購買体験が自分で買ったものが好きという態度と行動を一致させようとする結果
消費者の思考や購買意図を観察すると、平凡でコミットメントに欠けるロイヤルティが存在している。ロイヤルティじゃなくて習慣化でありこれでないといけないということは多くない。
「ファンマーケティングってのがよさそうだからうちも既存顧客集めてレビュー会を開催しよう」みたいなのはとても短絡的で、ロイヤリティの価値はどれくらいなのか、リピーターの維持にどのくらいコストをかけるべきなのかは商材やマーケットによってまったく異なるということです。
自分が消費者のときを考えてみても、ロイヤリティが高いからリピート購入するのではなく、なんとなくとか習慣になっているからなんですよね。日用品なんかはコミットメントに欠けるロイヤリティがあって、価格や新商品で簡単に乗り換えが起こる気がします。
ダブルジョパディの法則とはなにか
従来のブランディング論的には、「プロダクトに対するロイヤルティはシェアと無関係でシェアが小さくてもロイヤルティの高い顧客を持てる」というのが通説でした。しかし実際のマーケットがどうなってるかというとシェアの高いプロダクトほどロイヤルティが高いという結果となりました。よってブランドの成長の鍵は顧客獲得を大きく伸ばすことにあって、マーケターが顧客の離反をコントロールことはほとんど不可能(サービス不要、社内決定、引っ越し)。ロイヤリティを上げたければシェアをとれってことなんですね。
マーケティングはライトユーザーとノンユーザーにリーチできたときに最も成功する
詳しい説明は本書を読んでもらうとして、この本で言っている内容は下記です。
- ブランドの成長と維持には顧客の獲得が極めて重要である
- すべての消費者層、特にブランド購入頻度の低いライトユーザーにリーチすることが極めて重要である。
マーケティングを成功させるためには差別化とかセグメントとか言ってないで新規獲得をしようという内容です。
購買行動はブランドの理解、認知、態度の強力な推進力。人のブランドに対する態度はその人がブランドをどの程度購入しているかに反映される。(=ブランドロイヤリティ)
また差別化は思っているほど消費者に理解されていなくて、ロイヤルティはブランドの差別化によって生まれるのではなく、消費者の行動特性の1つに過ぎないみたいです。
結論:マーケティング/ブランディングの常識を疑うこと
マーケターなら雑誌やネットメディアの「マーケティング成功事例」に目を通すことがあると思うんですが、それはなにをもって成功としているのかを考えるのが重要なわけです。新規ユーザー◯◯人獲得とか、売上◯◯アップなどのタイトルを付けがちなんですが、「本当にその施策が効いた結果なのか」「費用対効果は適正だったのか」を考える癖付けをしないと流行りの施策やるマンになってしまいます。
自分で納得感のない提案をしてしまうことに悩んでいる日々まじめにマーケティングに向き合っている人には読んでほしいです。
- 作者: バイロン・シャープ,加藤巧,前平謙二
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2018/07/06
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
↓こちらの記事もおすすめ↓