意味のない会議は行動科学で解決できる『賢い組織は「みんな」で決める』要約とまとめ

2019年10月29日読書・書評

「会議に効果はあるのか」「会議なんてやっても意味がない」「なかなか効果的な会議ができない」

日々時間に追われているにも関わらず無駄な会議に憤りを感じる人も多いだろう。全員が無駄だと感じているのになんでやってるんでしょうね、、

著者は心理学や行動科学の専門家で特に間違いや失敗についての研究を行っている。個人が間違いを起こす(誤った意思決定する)のはどういうときでそれが組織になるとどうなるのか?について分析を行ったのが本書。

結論から言えば組織は個人の間違いを増長させてしまうことが多い。それではどのようにすれば組織の意思決定のクオリティを上げることができるのだろうか?特に意思決定者やマネージャーは読んでおいたほうがいいかもしれません。

会議が意味をもつのは多様な意見が集まるときだけ

社長や責任者が自分で決めればスピードは早いのに、意思決定を組織で行うメリットはなんなのだろうか?組織として意思決定をする理由は「多様な意見と情報を活用して間違いを防ぎよりよい決定をするため」だ。知っている情報というのは人それぞれである。そして各人は自分の持っている情報だけで意見を作る。自分が知らなかったけど他人が知っている情報を得ることで間違いを防ぎよりよい考えが生まれる。

話し合いや会議を行う理由は自分が知らなかった情報を得ることと他人が知らない情報を提供することで、その情報交換や共有がなければそもそも組織で議論をする意味がない。

会議がうまくいかない理由

なぜ会議が意味のないものになったり誤った意見を増長させ逆効果になるかというと、情報や意見が出てこないからである。よく「いい意見が出てこないんだよな〜」とか言う人がいるが、この原因はこの会議の意思決定者やリーダー、ファシリテーターによるものである。このようなことに心当たりはないだろうか。

・意見を求められたので話したのにイマイチな反応をされたり反論される

・結局社長や意思決定者の考えが採用される

・なんとなく結論が決まっている

組織に属するひとりの人間としては、わざわざ面倒な議論や争いを起こしたくないし、最終的に採用される意見が決まっているならそれに反対する必要もない。なんとなく賛成しておくのが一番無難な行動になる。このような個人がとってしまう当たり前の行動を本書では「情報シグナル」「評判プレッシャー」という言葉で説明している。

出世したければ会議で最初に発言する

また集団の行動に人は最初に行動を起こした人に従う(合理的だと判断してしまう)「カスケード効果」というものがあるため、最初に発言した人の意見が採用されることも多い。これはランキング上位の曲のほうが高い評価を得たり、株式相場での根拠のない動きやバブルなどにも表れている。

カスケード効果をうまく活用するならば、組織で出世したい人は会議で最初に発言するといいかもしれない。斬新な考えや変わった考えを話す必要はなく、みんなが合意しそうな最終的に落ち着きそうな意見を発言するだけでいい。そもそもみんなが合意しそうな考えであるのに加えてカスケード効果によってその確率は高まる。あたかもあなたの意見が採用されたかのような雰囲気を作れるし、リーダーシップを錯覚させることも可能である。

会議や組織の意思決定を成立させるためには「情報シグナル」「評判プレッシャー」を小さくして「カスケード効果」の影響を排除するシステムが必要になる。本書ではリーダーが意見を述べないことや批判的な意見を称賛すること、発言の機会をランダム匿名にする手法などが紹介されている。

PRとしての行動科学の活用

カスケード効果をはじめ組織の行動科学を理解することは、PRに非常に有用なのではないか。PRが「サービスや商品」と「社会」のつながりや空気をつくっていくことだとしたら、集団心理や行動科学は役に立つ。

例えばレビューを書く際には、すでにあるレビューの点数が自分のつける評価に影響を与える。YouTubeの高評価と低評価の数は次の人がどちらを押すかに影響を与える。Twitterの口コミでいいって書いてあった。このあたりの空気や世論の作り方(作られ方)はPRの本も勉強になるのだが『140字の戦争――SNSが戦場を変えた』や『戦争広告代理店』のように実際にPRが戦争に使われた例などがおもしろい。

会議を効果的にするといった小さなことから世の中の空気を作っていくといった大きなところまで、行動科学の理解は役に立つのかもしれない。

2019年10月29日読書・書評