インサイト分析とは人間を観察するマーケティング行為である

2018年2月23日マーケティング

Kindle読み放題をウロウロしていたら見つけたので読んでみた。 
一般的にマーケティングは「他社と差別化をして勝てるポジションをとりましょう」的な話がベースになっているんだけど、現代においてはほとんどの商品はだいたいいいので、消費者がその中からそれを選んだ理由は特にないという時代になっている。これは自分に当てはめてもそうで、コンビニのお茶の特にこだわりはないし、入る牛丼屋を選ぶときにもそう。
 
だからマーケティングを考える際には表層的なニーズを追うんじゃなくて、消費者の奥にあるインサイトを探ろうよと。消費者ニーズを分析した商品やサービスが当たるんだったら大企業の新商品がコケることはないし、サービスだってほとんど成功するでしょう。それがうまくいかないのは「あったらいいけど特に必要はないよね」という商品を作ってしまうからで、消費者はより安いほうがいい、より早いほうがいいとか単純なことしか考えていないといったレベルの改善しか思いつかないので単純なアンケートやヒアリングの罠にはまってしまうことが往々にして起こり得る。

インサイトとは無意識なので言語化しにくい

インサイトとは無意識なのでヒアリングでは簡単に出てこない。
また売上を改善しようとしてユーザーヒアリングを行ったとしても、その商品を買わない理由を消費者は知らないのである。「なぜ買わなかったんですか」と聞いたとしても意味のある回答は返ってこないことが多い。
 
マーケティング領域ではインサイトがちょっとしたブームになっている気もするけど、LINE田端さんもマーケティングはインサイトを理解することだって言ってたよね。
僕なりに「インサイト」を訳すと、“抑圧されているがゆえに語りえない本音のこと”だと思っています。
でも、ホワイトカラーの真面目なサラリーマンには、新聞は読まないといけないっていう抑圧が未だにあるのかもしれない。そんなに新聞読むことが大事だったら、「ちゃんと定時の勤務時間の中に30分新聞読む時間を取ってください」とか、「購読代を会社で持ってください」とか言いたくなる気持ちもあるじゃないですか。でも、ほとんどの人が見出しくらいしか読んでいない、中身をちゃんと理解していない、それなのに日経新聞読んでいるってことが一種のステータス。そういう意味があるから、一応読んでいる。
 
商品でなくて広告でインサイトを満たすこともできますね。
ハーレーダビッドソンの実際のユーザーは銀行員など固い職業の人も多い。この人たちは普段真面目に生きている自分への反動からみんながイメージを持っているハーレーダビッドソンに乗っている自分かっこいいというインサイトがある。
こういったインサイトがあるからといってハーレーダビッドソンが「普通の人でも乗っています!」という訴求の広告をしてしまうのは完全に間違いでイメージを崩したら元も子もないわけです。

エンジェルインサイトとデビルインサイト

人が本当に動くインサイトが心の奥にある欲望だとしたら、インサイトは美しいものだけではありません。インサイトを話すことは恥ずかしいし、自分では自覚したくないものを含むこともあります。
 
2017年の流行商品を見てインサイトを予想するとしたら、
 
ミールキットのインサイト
⇒献立を決めて買い物に行って料理をするのは面倒だけど、ちゃんと料理をした感や手作り料理をアップしたい
 
クラフトボスのインサイト
⇒缶コービーは甘くてださい、コンビニカップコーヒーは冷めるとまずいしアイスなら氷が溶けるとまずい、冷めても飲める少しだけおしゃれな飲み物がほしい
 
最近で言えばハンバーガー屋に黒烏龍茶が置かれるようになったのも、ハンバーガーの不健康感を黒烏龍茶を一緒に飲むことで罪悪感を減らすという一見意味不明な消費者インサイトなわけです。
一時的な流行商品をざっと見てみるとしっかりインサイトを刺しているものは長続きしそうですし、広告で跳ねたものは一時的なブームで終わりそうです。
 
web広告やっていてもユーザーとしてネットの広告を見ていても、「こんな商品があります」とか「こんなイベントがあります」とかチラシのようなメッセージになっているものがほとんどで全くインサイトに刺さってないものがほとんどです。
まだ刈り取りのための広告に使われているというのが大きな理由ではありそうだけど、どんなベネフィットがあるのかすらも打ち出せていないものが大半を占めているのでそこらへんはマスの広告ってレベルが高いなあと思いますね。 

インサイト起点がないクソサービス

サービスを開発しようと思ったときにニーズのないものを作ってしまったというのは最も多い失敗ですし、一方ニーズが明らかなものを作ってもおもしろくないという矛盾があります。
そこで「ユーザーは本当はこう思っているよね?」というインサイト分析が役に立ちそう。
「馬が交通のメインだった時代に車が欲しいとかユーザーはわからない」というのはよく言う話ですが、そのユーザーに「馬の管理をする必要がなく、馬より早い乗り物があったらいいよね?」と聞けば「そうだよね」と返ってくるわけです。でもそれが実際に普及するかどうかはサービス・商品以外の広義のマーケ的な要素が大きく関わってきそうなので、結局信じてやってみるしかないよねというスタートアップ的なものになる気もしています。
 
「技術は手段であり、インサイトを充たすために技術を使う」というのがインサイト起点の本質なので、ブロックチェーンでなにかやろうとかAIを使ってなにかできないか?とか技術から考えると独りよがりなプロダクトの出来上がりです。

優れたアイデアはひとことで表現できる

人を惹きつけるアイデアには短くて強いメッセージがあって、フレーズは13文字以内の体言止めで表せる。
理解を簡単にして興味を湧かせる手法としてSHOWROOM前田社長がニューズピックスのメモの記事で言っていた抽象化の話を思い出した。

顧客のためというなら人間を見ろ

商品やサービス開発においてやりがちなところは他社サービスの良くない点を改善したものを作り出すことである。
これも間違いではなさそうだけど、多くのケースでは他社がそれをやらない理由はなにかしらあって、もしそのやり方で成功したとしても模倣可能なものであれば激しい競争が待っているだけである。
他社や市場、一般的なユーザーを見るのではなく、そこにいる”人間の感情”を見ることで本当に価値のあるものが作れるのではないか。ユーザーのためとかベンチャーとか言う割に、類似サービスを作ったりしていることが多くてそれは全く顧客志向ではないです。
本ではインサイトの分解とそれを商品やサービスの開発に実際に使えるようにするためのリサーチの手法や注意点まで網羅している。ある程度の規模の会社の商品開発とかだったらこういったリサーチをやったるするんでしょうけど、小さい組織や個人が小さく始めるんだったら自分のインサイト洞察を信じてトライアンドエラーですね。 

2018年2月23日マーケティング