会社が副業を禁止したい理由と副業解禁できない企業の将来性のなさ
政府の働き方改革の号令や人材不足なども相まって、2017年頃から副業の話題やそれを支援するサービスも増加し始めました。株式会社シューマツワーカーの作成した「副業マップ2018」では副業に関するサービスが一覧になっているのですが、昔からあるクラウドソーシング系のサービスに加え、より専門的、高スキルな副業が増加しているというのが最近の流れのようです。
副業カオスマップ2018掲載サービスを紹介 | 副業・複業・フリーランスメディア-ハタラキカタミライ-
企業に所属しない働き方や副業は確実に増加しているのですが、それを禁止したい企業や実際に禁止している企業がまだ多くあるのも実態です。そこでサラリーマンとして働いたり、役員として企業に関わったり、雇用主として事業を行ったりという様々な立場を経験から、なぜ企業は副業を禁止したいのだろうかという点を考えてみました。そうすると副業を禁止するということが企業にとってもマイナスの影響を与えるのではないかという点も見えてきました。
従業員が副業をしようと考える理由
まずはじめに従業員がなぜ副業をしたくなるのか考えてみました。副業に関するアンケートや個人的な予想から主な理由を3つ上げます。
1.給料が安く収入を増やしたいから
一番多い理由はこれですよね。「月に○○万稼ぐ!」的なもので紹介されるものは、収入を増やすための副業です。給料を上げたら副業をしなくなるのかと言うとそういうわけではないのですが、所属している会社の給料が十分なのであればお金が理由で副業をしたい人はやらなくなりますよね。
2.自分が活躍できる場を広げたいから
自分が活躍できる場を広げたいというのも当然の欲求です。自分のできることで誰かの役に立ったり貢献できるのであればそうしたいですよね。さらに「場を増やす」というのは人生の幸福度を上げるといった点でもかなり効果的な気がします。 人生の幸福は収入や立場も少しは影響しますが、そんなことより「他者との深い関係性」のほうが圧倒的に影響が大きいため、所属する「場を増やす」というのは理にかなっているはずです。会社一本のようなひとつの所属の場合には、そこを(定年)退職したり潰れたりといった場合に一気に関係性を失うことになるのでリスクのある生き方ですね。
3.自分のスキルを活かしたい・伸ばしたい
「企業に所属していれば給料が増え続ける」というのが幻想であることは少し考えれば明らかです。一部の大企業では年齢に応じて給料が微増していくということもあるでしょうが少数派です。一方で転職しないで一生を終えるという人は稀になるでしょう。そんな時代に自分のスキルを伸ばせないというのはかなりリスクのある環境です。
そうすると「どんな仕事でも学ぶことがあって成長できる」と年長者が言い始めるフシがあるのですがそんなのは当たり前です。彼らが言っているのはそのスキル内容と成長の速度のことを言っているんですね。「どんな仕事でも成長できる」と語りだすお年寄りには是非お弁当に菊の花を乗せる仕事や交通整備の仕事で圧倒的成長をしていただきたいものです。自分の時間の多くを要する仕事でスキルが伸びないとなると、その他で補おうというのは自衛として妥当な判断なんじゃないですかね。
なんかこうやって見てみると、基本的には会社に原因がある気がしてきました。昔のように入社したら40年間スキルアップと責任を負うべきであるという社会ではないのにそれを引きずっているのが原因じゃないですかね。
企業が従業員の副業を禁止する理由とは
まあ副業する人が増えている理由はわかります。しかしこのような副業議論が起こるのはその一方で企業にも副業を禁止したいという考えがあるからであるはずです。よく言われる副業を禁止にする理由はどんなものなのでしょうか。
1.情報漏えいのリスクがあるから
顧客情報やその他機密情報が流出する可能性があるというのが理由として上げられます。でもサーバーやハッキング、人的なミスによる何万人の情報流出!というニュースはよく聞きますが「副業が原因で情報が流出され〜」という報道って聞くことがあまりないじゃないですか。発生していないのか認知できないのか発生していても報道にならないのかは不明ですが、Googleニュースで探してみたところ最近のものでは1件だけ見つかりました。
警官副業疑い 内部文書数千点が流出 兵庫県警分は300点
兵庫など17道府県警と警察庁の警察官が、昇任試験の対策問題集を出版する「EDU-COM」(エデュコム、本社・東京)社から原稿執筆料を受け取っていた問題で、警察の内部文書数千点が同社側に流出していたことが関係者への取材で分かった。「取扱注意」「部外秘」とされる文書も含まれていた。行政文書を無断で持ち出すのは内規違反に当たり、内容によっては地方公務員法に抵触する恐れがある。
神戸新聞NEXT|総合|警官副業疑い 内部文書数千点が流出 兵庫県警分は300点
いや、これは副業関係なくてただの犯罪!
よく言われることですが、情報漏えいについては副業をしてもしなくても関係ない気がします。代理店は飲み屋や合コンで自分の担当するクライアント名を出すんでしょうし、自社の業績の予想について友人と話したりすることもありますよね。ただこれがわからなくもない業界やケースもあるので一律でアホだと言うのも違う気はします。
2.過重労働による体調悪化の可能性があるから
「就業時間以外に副業を行うと働きすぎによって体調が悪化し、本業へ支障をきたす可能性がある」という理由が上げられることもあるのですが、それに対しては「じゃあ健康のために8時間労働で帰してやれよ」という感想しかないです。趣味や副業を体調が悪くなるまでストイックにやる人ってそんなにいるんでしょうかね、、だったら趣味も禁止しましょうか。そもそも「副業すると働きすぎて体調を壊す」と唱える人は、仕事はつらいものでお金のために苦痛に耐えるものであるという考えがベースになっているのでめちゃくちゃかわいそうな人でもあります。
しかし一方で、副業の過重労働による過労死等の発生が会社の損害賠償請求対象になったりすることもあるようで、法律が追いついていないことで企業が二の足を踏むというのも少しだけわかります。「もしこういうことが起きたらどうするんだ」的な言い訳を言えないように法律や制度の整備を進めることも必要なようです。
3.他社が解禁していないから
副業を解禁できない(しない)理由としていろいろありますが、この「他社がやっていないから」というのも大きいでしょう。行政が「働き方改革を推進しよう!」というだけで解禁する企業が出始めるんだから完全にそうじゃないですか。昔のクールビズもそうですよね。それまではネクタイを締めないなんてあり得なかったのに、みんなでクールビズを進めましょうという号令でネクタイなしやジャケットなしが認められる社会になりました。リスクが少しでもあるものは始めにくいというのがそういう企業の特徴です。
でも企業の本心は?
大企業は「まだ公に副業解禁を公言している企業は少数派だし、なにかしらのリスクもありそうだから始めなくていいか。」というところも多そうです。
でも中小企業や零細企業、自称ベンチャー企業が副業を禁止したい理由は「副業する時間でさらに仕事をしてほしい」なんですよね。そもそも残業代等が正当に支払われているわけではありませんし、企業からしたら「同じ給料でできるだけたくさん働いてくれる」方がお得そうですよね。これが実際に得なのかは一旦置いておいて、単純に支払う給料が同額の場合、副業する時間があったらその分会社の業務を行ってくれたほうが短期的にはメリットがありそうですよね。
副業を解禁できない企業の将来性
それらしい理由は様々あるんですが、結局副業を解禁しにくい企業側の理由はこんなところでしょう。
- 副業がきっかけで転職や独立してしまうかもしれない
- 副業で稼いだら給料が安い(適正でない)のがバレる
- 時間等のリソースをすべて自社に使ってほしい
他の男と話しちゃいけないと束縛する男と同じですよね。「話をしたらSEXや付き合うことに発展するかもしれないから禁止」と「副業したら転職や独立しちゃうかもしれないから禁止」って似てません?
副業より本業に時間を割いたほうが稼げて勉強になるのであれば副業を解禁してもみんな副業なんてしませんよ。今後は企業側も副業禁止で集まってそのまま会社に居続ける人間というのは、過去と比べて優秀ではなくなっていくということを覚えておいたほうがよさそうです。
じゃあ個人ができることは?
そもそも就業時間以外なんだからなにしても自由だろ、なんで一企業がそこまで介入できるの?というのは普通の感覚です。それでも文句が言えないのはそれだけのバリューを出していないため辞めるという選択肢がないことが理由です。スキルがあったりバリューを出していてそれが市場と比較しておかしい
ならば給与や待遇、環境の交渉もできますし、それが受け入れられなかったら別のところで働けばいいだけです。仕事で結果を出す+会社以外でも有効なスキルを身につけるというのが個人としての対策な気がします。
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