スキルを掛け合わせても100万人に1人の人材にはならない『1日3時間だけ働いておだやかに暮らすための思考法』書評
『1日3時間だけ働いておだやかに暮らすための思考法』と聞くと怪しい自己啓発とか仕事術みたいなタイトルですよね。どこで見かけたのかは忘れたのですが、Amazonから届いたので読んでみました。著者はコンサルティング業界やM&Aに従事していたゴリゴリのエリートだと思っていたので、仕事のしかたとかそういう類の本だと予想していました。
1日3時間だけ働く?思考法?
実際にこの本を読んでみると、仕事のコツとかまったくそういった本ではありません。タイトルの『1日3時間だけ働いておだやかに暮らすための思考法』の「1日3時間だけ働いておだやかに暮らす」部分ではなく「思考法」についての本でした。
本書は前半の「思考とはなにか」「考えるとはなにか」「どのように考えるのか」から、後半のお金やコミュニティについての話に移っていきます。後半は少し前にあった佐藤航陽さん『お金2.0』や西野さんの『革命のファンファーレ』に近い内容かもしれないです。
知識はお金を生まないが、あらゆるコストを下げる
20世紀は知識がお金を生みましたが、知識が誰でも手に入る時代には知識はお金を生まなくなりました。この時代には「知識」よりも「思考」のほうが格段に価値があるわけですが、知識は不要になったのではなく、知識はあらゆるコストを下げるために使われます。生活のコストを下げることにも使えるし、考える材料になるので思考に必要な時間も短縮できます。知識はすぐに役立つものとは限りませんが、選択肢を増やし自由を増やす可能性があります。
全体の理解に二項対立が役に立つ
物事の全体像を理解するためには二項対立が役に立ちます。
二項対立とは論理学用語の一つ。二つの概念が存在しており、それらが互いに矛盾や対立をしているような様のことを言う。元々は一つの概念であったものを二分することにより、それを矛盾や対立をする関係へと持っていくことを二項対立と言うこともある。
筆者が問題の本質を理解するために活用する代表的な二項対立は、
(1)目的と手段
目的はさらに上にある目的の手段になっているから。「目的の目的は?」を考えると一段階上の視点で物事を考えることが可能になります。
(2)原因と結果
結果に一喜一憂しがちですが、成功にも失敗にも理由があります。本質的な課題は常に原因にしかありません。
個性とは天才性の組み合わせ
個人がフォーカスされる時代に私たちはどうしていけばよいのでしょうか?
ひとつのアドバイスとして本書では「個性を組み合わせてユニークになること」を薦めています。スキルのレベルではなく、もっと微細で深いレベルで自分は何を得意にしているのか?を詳しく細かく考える必要があり、その個性(天才性)を組み合わせるというものです。
例えば「営業が得意」は「ニーズを機敏に捉えること」かもしれませんし、「ブログを書くこと」は「論理的に思考ができること」かもしれません。
子どもの天才性はどこにあるか?
親としては子どもの天才性は気になるところ。天才的な部分というわけではなく、特徴や個性という意味で。ただ親ができることなんてほとんどないしそんなの勘違いにすぎません。過度に干渉することなく様々な体験をすることだけに注力するのがいいんじゃないかと調べれば調べるほど考えれば考えるほどそういう結論に至る。勉強でもスポーツでも趣味でもネットがあってYouTubeがある時代なんだから、やりたいことがあればやってみればいいじゃないか。
未来を見通す本だ
タイトルに「1日3時間だけ働いて~」が入っている理由はあまりないのでこの辺は少し釣りっぽいなーと感じました。しかし前半の考えるという意味とその方法について、後半の未来予想的な部分もおもしろく、いろんなところで言われている「貨幣経済から信用経済へ」「複数コミュニティへの所属」といった部分は解説が丁寧で個人的には理解が進んだいい本でした。
話は最終的に健康と徳に帰るのですが、ここに時間使っていきましょう、、