お受験や早期教育を考える前に『「学力」の経済学』を読んでほしい

教育・子育て

「学力」の経済学

「学力」の経済学

 

こどもを持つひとりの親としては息子に期待するわけではないのですが、できれば避けられる不幸は避けてほしいし、自分のやりたいことを実現してほしいものです。効果的な教育法や関わり方というものに関しては情報を集めていきたいと常々思っているのですが、こどもを東大に行かせた教育法などというサンプル数1のお話や、○○を食べると頭がよくなるといいったひどく科学的ではない話を娯楽テレビだけではなく情報番組でもやっていたり教育雑誌で掲載されていたりとそりゃ永遠によくならないわとがっかりする日々を送っているわけです。

読書は数年来やっているのでこの『「学力」の経済学』も見たりしていましたが。こどもの学力に関心があまりなかったことと、なんか怪しいビジネス書のような装丁が胡散臭くて興味がわかなかったんですよね。でもブログかなにかで紹介されていてとりあえず読むことにしたのですが、これは全親が読んでおくべき本なんですよ。なんでいいのかってことをちょっと書いておきます。

親と教師は読んどけ

テレビを見ると頭が悪くなるとかスマホは学力を下げるとか教育に関する迷信や言い伝えは無数にあるのですがそのほとんどは誰かの経験によって語られるものや、そうっぽいよねという雰囲気の話であってどれが科学的に正しいものなのかはわからないわです。相関関係と因果関係がめちゃくちゃでキャッチーでおもしろければいいというメディア様が、知識のない親に誤った知識を入れるから最悪なわけですよ。そういった意味ではちょっと科学風を装った番組ってより罪が重いなあ。ほんまでっかなんとかとか。

一方この本は教育や学力に対してデータに基づいた教育経済学でアプローチするという内容になっています。親もそうなんですが、教育関係者はまともに勉強していないと思うので最低こういうのはインプットしておいたほうがいいんじゃないでしょうか。

教育に関する通説は正しいか?

健康と教育の分野は宗教みたいなものでなぜか科学が受け入れられないんですよね。これを食べたら健康になるとかこうすれば痩せるとか永遠にやっててやばいでしょうと。この本ではデータの重要性や使い方を説明するために、教育に関してよく言われることが正しいのかそうでないのかの例をいくつか紹介しています。

ご褒美を与えるのはよくないのか?

これはよく言われることですね。モノで釣ってやる気を出させるのはよくないというやつです。これがいいのか(効果があるのか/悪影響がないのか)というと結論から言うと、

アウトプットへのご褒美(テストで100点とったら等)はテスト結果の向上に効果がなかったが、インプット(本を読む、出席するなど)へのご褒美にはテスト結果の向上に効果があった

という実験の結果が出てきました。これは「テストで○○点とったら○○買ってあげる」というのはテストの点数を上げる効果はあまりないが、「毎日宿題やったら○○買ってあげる」には結果的にテストの点数を上げる効果があったということです。

ちなみになぜテストの点数というアウトプットだと効果がなかったかというと具体的な方法やとるべき行動が明らかでないからと予想されています。ということはどうやったらテストの点数が上がるのか考えられる場合は「テストで○○点とったら○○買ってあげる」でもいいということですね。

自尊心は学力を向上させるか?

これもよく言われることで、「自尊心がある子どもは学力が高い」ですね。しかし自尊心が高まれば、子どもたちを社会的なリスクから遠ざけることができるという有力な科学的根拠はほとんど示すことができず、自尊心と学力の関係は相関関係にすぎず、因果関係は逆であるということがわかりました。

むしろ点数が低かった子どもに対して過度なフォローを行い反省を促さないことのほうがマイナスの影響があります。やっぱり人格や結果は責めずにプロセスを反省するということが重要そうです。

幼児教育/早期教育に効果はあるか?

最近の研究では推理的推論能力や一般知能といった基礎的な能力は遺伝の影響が非常に大きいことがわかっています。

論理的推論能力の遺伝率は68%、一般知能の遺伝率は77%ということでした。遺伝率という言葉の定義がわかりにくいのですが、ちなみに身長の遺伝率は66%、体重は74%です。身長や体重は割と遺伝することは感覚としてもあると思うのですが、身長や体重と同じくらい論理的推論能力や一般知能も遺伝で決定するということです。

それでは教育に意味がないのかといったらそういうわけではないので(家庭における教育はほぼ無意味ではありますが)どんな教育を与えればよいのかのデータもまとめています。それによるともっとも人的資本の収益率が高い(教育がもたらす収入の費用対効果が高い)のは、大学でも高校でもなく子どもが小学校に入学する前の就業前教育(幼児教育)であるということがわかりました。これだけだと子どもを公文式に通わせたらお受験塾に通わせたりすることに効果がありそうですが、落とし穴は早期教育によって得た「認知能力」の優位性は効果が持続せず8歳ごろで差がなくなるということです。これは早くお勉強を始めて文字が書けるようになったり計算ができるようになったとしても、それはただ時期が早くできたというだけで小学校の中頃には追いつかれるということですね。子どもに早期に与えるのであればそういった知識などの「認知能力」ではなく、忍耐力や自制心といった「非認知スキル」「非認知能力」のほうが重要です。

でも先生も大変だ

ふと疑問に思ったんですけど幼稚園や小学校の先生って普段どれだけ勉強しているんでしょうね。 労働時間が長いとか忙しいといわれているので勉強する時間なんてほとんどないでしょうし、人間力が重要なんだ!とか言ってこういったこと受け入れなさそうじゃないですか。

特にやりたいわけでもなかったのにこんな重要な職業につくって大変だなあとつくづく思いましたね。小学校〜中学の先生なんて教員免許やめて、社会人経験者と大学生サポートみたいな人たちでやったほうがいいんじゃないですかね、、と恩師に恵まれなかった人は思いました。

「学力」の経済学

「学力」の経済学

最近データ分析にハマっているのですがこの辺の本もいいよ

「原因と結果」の経済学―――データから真実を見抜く思考法

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データ分析の力 因果関係に迫る思考法 (光文社新書)

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