テロより高齢者ドライバーが10倍危ないことを「ファクトフルネス」的に検証してみた

読書・書評

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FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

  • 作者: ハンス・ロスリング,オーラ・ロスリング,アンナ・ロスリング・ロンランド,上杉周作,関美和
  • 出版社/メーカー: 日経BP社
  • 発売日: 2019/01/11
  • メディア: 単行本
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読む前は「データに基づく経営判断をしよう」とか「感情ではなく数字をみることが重要」というようなビジネス書なのかなと予想していたんですが、いい意味で予想と違った本でした。古かったり本能に基づく誤解を避け、ファクト(事実)を正しく認識しよう。誤った知識の上での議論はすべてが無駄になるよ的な本かと。本のなかから気になったとことを紹介しつつ、事実を見るというのがどういうことかをテロリストと最近話題の高齢者ドライバーの事故で考えてみました。

世界の貧困は増えているか?

「世界の貧困は過去20年でどのように変わっていると思いますか?」

  1. 倍になっている
  2. 変わっていない
  3. 半分になっている

この質問に3と答えられる人は多くない。世界はゆるやかでもよくなり続けているのにメディアに出てくるのは苦しい生活や社会問題ばかり。「ある国の水道普及率が○○%になりました」「B国の識字率が○○%から○○%」まで改善していますなんてニュースが流れることはありません。もちろん貧困や苦しい状況がなくなったわけではないのでこの状況がいいというわけでは全くないですが、認識をミスリードするような報道ばかりというのもどうなんでしょう。

世界の人口はどこまで増えてしまうのか?

確か僕が子供の頃に習った記憶だと世界の人口は60億〜65億くらいだったような気がする。現在は73億人くらいいるらしい。この10年で10億人くらい増えているわけなんですが、ということはあと100年すると100億人世界の人口が増加するのでしょうか?

1802年 10億人
1927年 20億人
1961年 30億人
1974年 40億人
1987年 50億人
1998年 60億人
2011年 70億人
2015年 73億人

そんなことはありません。すでに子どもの数は横ばいになっていて2011年から2015年では3億人しか人口が増えていません。人口がこのまま増え続けたら・・・的な仮定の話を無知で無垢な小学生の頃に聞いた気がするのですが、今なら「そんなわけねーだろ勉強しろ」と言わなければいけないんです。ちなみに世界の人口は100〜120億人くらいで止まるというのが人類学や人口学の専門家の間での通説。

テロリストと高齢者はどちらが危険か今夜くらべてみました

なるほど、世界の状況は悪化しテロが増えている気もするけど実際にはそこまで件数は変わっていないと。アメリカでのテロによる死者は年間100人に満たない。もちろんテロの目的は無差別に起こすことによって社会不安を与えるということなのでそういった意味ではテロが成功してしまっているとも言えますが。

それでは次に日本国内の交通事故死者数を見てみましょう。

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I 高齢者を取りまく現状|平成29年交通安全白書(全文) – 内閣府

残念なことに年間4,000人弱が交通事故でなくなっており、そのうち2,000人以上が65歳以上の高齢者です。

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最近よくニュースで見かけるように高齢者ドライバーは事故を起こしやすいのか?というと

(1)高齢運転者による死亡事故の発生状況
75歳以上の運転者の死亡事故件数は,75歳未満の運転者と比較して,免許人口10万人当たりの件数が2倍以上多く発生している(第10図)。

I 高齢者を取りまく現状|平成29年交通安全白書(全文) – 内閣府

このデータは「免許人口10万人あたり」の数字なので高齢者は免許を持っていても実際に運転をする割合は低いことが予想されるので、実際に運転する人が免許保有者の半分だと仮定すると高齢者ドライバーが5万人いると1人が事故で死亡することになります。

でも高齢者の事故がめちゃくちゃ増えているのかというと実はそうでもないみたいなんです。

75歳以上の運転者による死亡事故について,件数自体は10年間ほぼ横ばいで推移しているものの,死亡事故件数全体が減少する中,全体に対する構成比は上昇傾向にあり,平成28年は全体の13.5%を占めている(第11図)。

I 高齢者を取りまく現状|平成29年交通安全白書(全文) – 内閣府

高齢者による死亡事故が増えている気もしますが、実際には件数は変わっておらず事故全体のうちの割合が増えているということとキャッチーなのでニュースになりやすいというのが事実でした。しかし「高齢者の事故が著しく増加しているからすぐ免許取り上げろ」という意見はファクトフルネス的な指摘ではないわけですね。とは言っても事故率は異常に高いのでどうにか免許を取り上げてくれればと思います。

ファクトに基づいて考えると、

・日本国内でテロによる死亡者はほぼいない(0%)

・アメリカでのテロによる被害者は年間100人程度/3億人(0.00000033%)

・日本国内に75歳以上免許保有者が10万人いると10人が事故で死亡する

⇒H30では570万人の75歳以上免許保有者がいるから570人が死ぬ⇒年間570人/1.2億人(0.00000475%)

アメリカでテロで死ぬ確率より日本で高齢者ドライバーに殺される確率のほうが10倍以上高いし事故を起こすのは高齢者だけではないので、テロなんかより普通に交通事故に気をつけようという話でした。

殺人事件は増えているのか?

話は少し逸れますが、「最近は殺人事件や凶悪な事件が増えている怖い世の中である」というのも聞くじゃないですか。それって本当なのか殺人事件被害者数の推移というものを見つけました。

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殺人事件被害者数|年次統計

このデータによると、戦後の殺人事件被害者数は多少の増減はありつつも概ね減り続けているんですよね。まあ戦後の荒れた社会では殺人事件もまだ起きているだろうという予測はできますが、1960年になっても現在の4〜5倍くらいの殺人事件が起きていたわけです。昔はこんなに事件がなかったというお年寄りはボケて忘れちゃったのでしょうか?メディアが発達していなかったのでしょうか?

下記は同じところにあった統計資料なのですが、

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サラリーマン年収|年次統計

ちなみにサラリーマンの年収は1990年以降増えていませんし、

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大卒初任給|年次統計

大卒初任給も1990年頃からほぼ変化はありません。

1900年代後半は人口増加に伴い国も企業も成長していたので、給与や生活水準も右肩上がりでした。そういった社会では雇われて勤めていれば上司のとき以上に自分も昇給するといったことが起こるのですが、現在はまったくそういった社会ではないことは理解できますよね。

ファクトフルネスを読んで身につくこと

切り取られた情報や昔のイメージで物事を判断するんじゃなくて、マーケターを名乗るのであればなおさらそういった個人的な妄想は排除して思考をしたいものです。

(※途中で計算したものは正確な保証はまったくありません。データが正しいかはご自身でファクトに基づいた情報を集めて確認してください。)

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

  • 作者: ハンス・ロスリング,オーラ・ロスリング,アンナ・ロスリング・ロンランド,上杉周作,関美和
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