なぜ金を稼いでも幸せになれないのに人は働くのか?『幸せとお金の経済学』【書評】

読書・書評

なんでお金を稼ぐのか?収入が増えると幸せになるのか?

仕事でも稼ぐことでも家族を持つことでもなにかを購入することでもすべてが「幸せのため」だとすると「なんでお金を稼ぐのか?収入が増えると幸せになるのか?」というのはかなり重要な問いな気がします。お金ってどのくらい幸せに影響するのだろうかということに疑問があって、30歳を超えて家庭を持った時にどういう働き方と稼ぎ方、生き方がいいのか考え直していたところだったので、ちょうどいいタイミングで「幸せとお金の経済学」と遭遇。そもそも小学生の頃の将来の夢が「高等遊民」だったので、この疑問に当たるのも当然のことでした。

幸せとお金の経済学

幸せとお金の経済学

「幸せとお金の経済学」要旨

概要はAmazonの目次(幸せとお金の経済学)を読んでもらったほうが早いと思う。

めんどくさがりな人にために簡単に説明すると、消費(時間でも金銭でも)には「地位財(他人と比較して価値があるもの)」と「非地位財(他人関係なく価値があるもの)」というものがあって地位財を追いかけても幸福にはならないから、時間やお金といったリソースは 「非地位財」に投入するべきだよねというお話です。

地位財と非地位財

なぜ人は地位財では幸せになれないのか?それならなぜ地位財を追いかけてしまうのか?避けることはできないのか?といったことを順々に解説しています。

例えばどういうことか?

「地位財」と「非地位財」があることはなんとなく理解してもらえたかもしれません。しかし収入や高級品を購入している人は、他人と比べたいわけではなく自分が欲しいから自分が満足するから買っていると考える人もいるでしょう。それではここで「地位財」としての住宅(の広さ)と「非地位財」としての休暇を比較してみます。

<住宅のケース>

  1. 自分は100㎡の家に住んでいて、周りの人はみんな300㎡の家に住んでいる
  2. 自分は80㎡の家に住んでいて、周りの人はみんな40㎡の家に住んでいる

<休暇のケース>

  1. 自分は月に10日休みがあり、世の中的には月に15日休みがある
  2. 自分は月に5日休みがあり、世の中的には月に1日休みがある

<住宅のケース>のケースでは1と2で自分にとっての効用が大きいのは80㎡より広い100㎡に住む1のはずです。しかし周りの人が300㎡の家に住んでいる場合には100㎡の家は小さく感じますし、自分の家が80㎡でも他人が40㎡の家に住んでいると自分の家は大きく感じます。<住宅のケース>では全員が2を選ばず、人によって1を選択するか2を選択するかは分かれます。一方、<休暇のケース>のようなどれくらい休みがあるかといった問題になると、絶対的に休みの多い1の「月に10日休み」を選ぶ人が<住宅のケース>よりも圧倒的に増加します。

ここで重要なことは住宅の絶対的な大きさや相対的な休暇の長さがどうでもいいというわけではなく、住宅は休暇よりも地位が重視されるということです。

地位財の比較をやめられないのも当然

周囲との比較によって満足を得られる「地位財」に時間やお金を使うのは幸せにつながらないんだなとは理解できるのですが、それではなぜ人間はこのような幸せを生まない(むしろ不幸せになる)消費を続けるのでしょうか。

これは人間(動物)の進化から考えると当然のことです。人間(動物)は子孫を残すことが第一優先にプログラミングがされているので、それを達成するためには一見不幸せな選択をとることも避けられません。

基本的に他の条件が同じなら、資質を多く持つ動物ほどたくさんの子孫を残せます。女性は結婚や恋愛の市場において収入の多寡や社会的地位を重要視します。これが悪いわけではまったくなく、安定的な生活を送れたり、子どもによい教育や環境を与えたりといった生物的に当然の判断です。これが原因で男性は収入や社会的地位を追い求めたり、対外的に所得が多いことをアピールできる家や車や時計にお金を使ってしまうんですね。支出力は能力を示すシグナルになりえるためです。

地位財にあまり効果がないことは頭では理解できるけどそれができないのは、一部にとっては賢明でも、全体として見ると愚かなことがあるというのが理由です。例えば長時間労働と多少の収入増加が幸福にならないとしても、生物的に恋愛の市場でそれが選ばれるのであれば長時間労働による収入の増加を選択せざるを得ないということが発生します。

幸せなお金の使い方とは?

もちろん地位財への支出をすべてなくすのが最善というわけではないですしそれは現実的に不可能です。ただこれは「地位財」なのか「非地位財」なのかを一瞬でも考えることができる可能性ができたという点で非常に有用な本でした。

その他に本に書かれていたり書かれていなかったりしますがこんなことも感じました。

  • 結婚式の費用が2倍になって2倍幸せな結婚式や新婚生活が送れているのか?
  • マンションの高層階に住む理由は金額が高いというシグナリングの効果だけ?
  • 前沢さんが金をひけらかすのは中間層と下層を不幸せにしている?
  • ソーシャルの時代になって非地位財から地位財に変化したものも多そう

日本人はお金にあまり汚くない民族だみたいな話がたまにあるんですが、全然そんなことないなって感じました。仕事や転職、独立の話になると仕事内容や労働時間、環境の前に「給料はどれくらいなのか?」といった金の話になることも少なくないですよね。「年収」というのはひとつの項目であるのにも関わらず、労働時間、人間関係、通勤その他判断基準を無視して仕事の価値や幸福度を「金」で判断するのはかなり愚かな行動かなとも感じます。(愚かだから「年収○○万♡」「大企業♡」とかやるんですけどね。)

この本はアメリカで書かれた本なのですが、日本の近年の経済状況を絡めた説明もされていたりで非常によかった。「稼ぎまくって遊びまくってやるぜ〜」という人たちにはがんばってくださいとしか言えないのですが、「確かに収入が増えても幸せになっている感じはあまりしない」「お金を稼ぐことに意味があるのか」と少し考え始めた人には非常におすすめできる本でした。

幸せとお金の経済学

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