書評『もっと言ってはいけない』子どもの教育より婚活がんばれ

2019年2月12日読書・書評

現在ブーム中の橘玲シリーズ。前回読んだ「言ってはいけない」がよかったのでこちらもとりあえず読んでみようかと。新書で1〜2時間でも読める本なので軽くていいですね。今回も「もっと言ってはいけない」のなかからいくつか気になるところを紹介してみました。

もっと言ってはいけない (新潮新書)

もっと言ってはいけない (新潮新書)

「言ってはいけない」はこちら↓

「言ってはいけない」よりは穏やか

 この「もっと言ってはいけない」は前著「言ってはいけない」の続編のようなもの。遺伝や宗教、人種といった一般的にはデータがあったとしても公言しにくい内容をベースに、人種間の差や日本人の成り立ちに言及した本。人種によって知能は異なるのか?なぜ日本は高度成長を遂げたのに生産性は低いままなのか?なぜネットにはこんなに頭の悪い人が多いのか?など言われてみたら気になることや普段の生活とリンクすることが多いので一気に読めます。個人的には世界の地理に疎いのでそのあたりを除いてアジア周りの遺伝や成り立ちは特におもしろかったですね。前著「言ってはいけない」よりは切れ味は落ちている気がしますがその分説得力があったり世界史や地理といった分野まで関心が広がったという点で好奇心の広がる一冊でした。 

クソリプしてしまう人は文字が読めていない

僕はツイ廃気味なのでTwitterをみている時間がとても長いのですが、バズったTweetや有名人に非論理的な絡み(通称クソリプ)をしているのを見かけますよね。これってネットによってバカが可視化されたのかなーくらいにしか思ってなかったんですが実はもっと問題の根は深いみたいなんですよね。

  • 日本語をちゃんと読める人は3割しかいない
  • グラフを正しく読み取れるのは2割しかいない
  • パソコンを使った基本的な仕事ができる人は1割以下

日本語を読むというのは「言葉を読める」というだけではなくて「その意図していることがわかる」というスキルです。この結果はめちゃくちゃ怖くないですか?そんなことないと思う人もいるかもしれませんけど、中学校の同窓会とか行ったらおそらくわかるんだと思います。それで生きていけないだろ・・と思うかもしれませんが、確かに中学校の数学で70点をとれなかった人はその後能力が向上することってないんですよね。

それではなぜこんなに日本語が正しく理解できないとか理論的な思考ができなくてもやってこれたかというと「無意識と暗黙知」です。単純労働とかマニュアルのある仕事であれば師匠に教えてもらった通りにやるとかなんとなくの慣れでどうにかなっていた部分もありました。でもこのあたりの労働はどんどん自動化が進み仕事がない人(自分がバリューを出せる仕事が世の中にない人)が増加することはほぼ確実です。(別に全員が仕事をする必要ないんですけどね。)

企業は労働力が不足していると言いますが失業はまだ存在します。なぜこのような労働力の需給が改善しないかというと、需給マッチングの問題ではなく単純に必要なスキルが不足しているからというのが理由です。さらにこのスキル不足は教育ではどうにもならない部分があるというが認めなければならない事実です。

芸能人の浮気を叩くおばさんの心理

芸能人が浮気をしたり事故を起こしたりするとなぜかご迷惑をおかけして申し訳ございませんとか会見したりするじゃないですか。パートナーや事故の相手、仕事関係の人には迷惑かけてますが、その他テレビの前の人にはまったく迷惑かけてないですよね。なんでこんなことやってるのかなーと思っていたんですが、日本人に限ったことではなく進化という観点からみると原因が少しわかる気もします。

ヒトは共同体が安全に生き延びるために共同体内の暴力を抑制しておかしいヒトは除外する必要があります。そのために相互監視と道徳によって平等を作り生存を高める必要があります。

共同体の全員が道徳警察になって相互監視をすることで、秩序維持に必要なコストは劇的に下がる。他人の道徳的な悪を罰すると、セックスやギャンブル、ドラッグなどと同様に快楽物質のドーパミンが放出されることを明らかにした。ヒトにとって正義とは最大の娯楽のひとつ。

ワイドショーみてなんか言ってるおばさんもTwitterの炎上に加担するのも基本的にはこれですね。自分や社会で過去に考えられていた道徳に基づいて間違っているとか反省するべきだと意味のない非生産的な会話をするのは人間に組み込まれている機能だったんですね。

日本では協調性がないと収入が伸びない

心理学では人格を分類する手法のなかで「ビッグファイブ理論」という理論が最も信頼性が高いと言われており、これは開放性、真面目さ、外向性、協調性、精神的安定性という5つを計測するものです。 

仕事の成果を決める因子

これらの性格と仕事の成果(業績)の関係性をみるとすべての仕事においてもっとも影響が大きいのは真面目さで、次いで外向性、精神的安定性となりました。ただこれはすべての仕事に関するものでもちろん職業によって差があります。

ここでおもしろいと思ったのが「協調性」の項目で、日本では年間所得と協調性が正の相関関係なのに対し、アメリカでは負の相関関係になっていたということです。簡単に言うとアメリカでは協調性がない(個性的である)ほうが高い所得で、日本では協調性が高くないと出世できず所得が増えないということです。

人類を大きな時間軸でみてみると現在の人種や民族というものにどれだけ信憑性があるかってのは疑問ですし、「日本人というのは」「中国人は」「欧米では」というよくわからない根拠のないものを主語にした議論は今度から無視しようと思えるいい本でした。 

今後数十年、数百年で知識による格差が更に加速しそう。今までは知能が低くてもなんとかやっていけたけどこれからは知能格差による所得格差は拡大して知能社会に適していない遺伝子の淘汰が進みそう。ひとりの人間としてできることは子どもの教育を頑張ることではなく子どもをいい環境に置いてあげることだけだし、その前に優秀な遺伝子(学校とか勤務先がいいではなく論理的思考力や空間把握能力といった自頭)を持った結婚相手を見つけることですよ。

もっと言ってはいけない (新潮新書)

もっと言ってはいけない (新潮新書)

 

 言ってはいけない―残酷すぎる真実―(新潮新書)を読んでみた感じはこちら↓

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2019年2月12日読書・書評