イノベーションを天才に頼ってはいけない「ゲームの変革者」【書評】

2019年1月22日読書・書評

ゲームの変革者―イノベーションで収益を伸ばす

ゲームの変革者―イノベーションで収益を伸ばす

  • 作者: A.G.ラフリー,ラム・チャラン,斎藤聖美
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2009/05/23
  • メディア: 単行本
  • 購入: 6人 クリック: 17回
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「ゲームの変革者」はどんな本

本書は元P&Gのラフリー会長兼CEOと経営コンサルタントのラムチャランがお互いの体験と研究を凝縮した経営書で2008年にアメリカで発売され、同年のビジネスウィーク誌の経営書トップ10に選ばれているベストセラー。

イノベーションと言うとアップルやGoogleといったIT企業やベンチャー企業の話が多く、P&Gのような大企業の話はあまり出てこないイメージ。しかし実際にはイノベーションが必要なのはベンチャー企業も大企業でも同じで、この本はそういった大企業におけるイノベーションを組織的を生み出し、イノベーションを志向する組織のためにどのような工夫をするのかを体系的にまとめた本。もちろんベンチャーや起業家にも役立つが、どちらかというと規模のある企業をどうやってイノベーションが生まれやすい組織や文化にするかといったほうが近いかもしれない。

イノベーションへの誤解

イノベーションは天才が生み出すものであるというイメージがある。しかし実際にはイノベーションを可能にするのは1人の天才ではなく、人と人が協力して初めて生まれるという点で「イノベーションは団体競技」であるというのが本書で書かれている意見。イノベーションが必要なのはベンチャーだけではなく、大企業でも同様である。大企業で継続的なイノベーションを生み出そうとすると、イノベーションが天才から生まれてくるのを待つという選択肢はとれません。そのためにはイノベーションを天才や偶然、運任せにするのではなく、目標、戦略、組織、システム、企業文化、リーダーシップといったもので実現することが必要になります。

イノベーションを生み出す環境

イノベーションは売上と利益を生み出し社会に貢献するとほとんどの人が信じているはずです。しかしそのイノベーションを生むといった話になると個人と運に任せきりである気もします。また時間がない、金がない、人材がいないといったイノベーションが生まれない理由を出すことも得意です。

目標達成の方法や働きやすい環境といったものは科学が進んでいますが、イノベーションへの目標設定、戦略、組織作り、リスク管理というものは分析していることは多くなかったのではないでしょうか。P&GやGEといった超巨大企業をイノベーション志向に変えた考え方は全マネージャーが理解して損はないはずです。

顧客中心イノベーション

保管しておいてもいい本かも

イノベーションは部署、事業部門、会社の日常業務のなかに組み込まなくてはならなりません。同時になにか制度を入れれば解決という問題でもありません。なぜかというとイノベーションは人間のすることであって、機械的にできるものではないからです。「この人はたぶんこれで困ってるよ」とか「このユーザーのインサイトはこれだよ」と機械やAIが教えてくれるのはだいぶ先になりそうです。

イノベーションは天才の思いつきや発想であるという考え方を改めて、イノベーションは組織の志向性であるということを忘れちゃいけないような気がします。その点でこの本はメンバーやチームを持つマネージャーや経営層が理解する方が世の中にインパクトがあるんじゃないかなと感じました。

ゲームの変革者―イノベーションで収益を伸ばす

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  • 作者: A.G.ラフリー,ラム・チャラン,斎藤聖美
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