松屋のうな丼に見たインフルエンサーのインフルエンサーという存在
影響力を持つ人というのはもちろん太古から存在しましたが、SNSの時代に彼/彼女らはインフルエンサーと呼ばれるようになりました。メディアに露出するような有名人でなくても、数千、数万人のフォロワーやファンを持つ一般人がインフルエンサーとして消費者の意思決定や企業のマーケティング戦略に大きな影響を与えています。
企業や広告代理店はこれに目をつけて従来のような広告を打つよりもこれらのインフルエンサーに紹介してもらうほうがユーザーに対して影響を与えられるのではないかとインフルエンサーマーケティングと名付けPR投稿のようなことをしてきました。
ここ最近Twitterを中心に松屋のうな丼が話題になっていました。そこでなぜここまで話題になったのかを考えてみるとインフルエンサーを動かすインフルエンサーの影響が強いのではないかなーみたいなことを考えたので適当に書いておきます。
松屋のうな丼
今回Twitterでバズったきっかけになったのはこの記事なんじゃないかと思います。その前から記事はいくつも出ていたんだろうけど、僕がいるITやマーケティング界隈ではこれが最初に話題になってたはずです。
松屋のうなぎがまじで高級うなぎ屋と変わらないクオリティなので1回食ってくれ!
著者の鳴海さんは普段から本当におすすめできる商品を紹介している人であるという信頼、記事の中ではうなぎ専門店とのクオリティ、価格の比較、またうなぎ好きの同僚による高評価まで盛り込んだ完全に人に行動を促すことができる記事。これ読んで次の日に食べに行きましたもん。
Twitterの民だから松屋のうな重不可避 pic.twitter.com/tgkNn8pYId
— みねりゅう🐚 (@mineryujp) July 19, 2019
この記事が出た後にユーザーは松屋でうな丼を食べる→Twitterにアップする→それを見たユーザーが松屋でうな丼を食べる→Twitterにアップする→それを見たユーザーが松屋でうな丼を食べる→それをTwitterにアップする・・・というユーザー投稿の回転が始まっていくわけです。そのなかには消費者やフォロワーに影響を与えるインフルエンサーも含まれこのユーザー投稿の発生に拍車をかけます。
学生さん、うな丼だ。松屋のうな丼なら、普通の鰻屋と変わらないうなぎが1500円で腹一杯食えるんだ。臭みもなく、普通に満足できるうな丼がね。しかもご飯大盛り無料。松屋のうな丼を食べるんだ。 pic.twitter.com/Gu9veDSC5z
— 社畜漫画家ベニガシラ@3日目西L-22b (@poppoyakiya) July 19, 2019
2019年 外食メニュー オブジイヤー。これまでのぶっちぎりトップ。松屋の鰻丼。 pic.twitter.com/XGkecCG6kC
— 田端信太郎 @田端大学塾長である! (@tabbata) July 27, 2019
ひとつの投稿が何万リツイートでバズったとかいう話ではなくて、どれだけの人が影響を受けて行動に移したのか(そして再投稿したか)というのが重要なわけです。今回は会社や家をでれば目の前にある松屋という場所で1,000円のコストで体験できるものなので行動のハードルが非常に低く、実際に行動に移す人が多かったからUGCがどんどん生まれたと予想できます。(コンビニに売ってるものとかにも影響力大きいね)
インフルエンサーにとってフォロワー数より大切なもの
インフルエンサー施策やPR投稿において代理店やインフルエンサープラットフォームを挟んでいる場合、「フォロワー数が◯◯人だから▲▲万円」というように金額が決まることが多いです。フォロワー数で金額が決まるのはおかしいなと全員が感じつつも、大量のインフルエンサーを起用しようとした場合、ひとりひとりの金額を交渉するのは面倒なので確かにこういう決め方のほうが効率がよさそうです。
リーチを獲得するのが目的なのであれば(アクティブな)フォロワー数の多いインフルエンサーにPR投稿を依頼することにも意味があるのかもしれません。もちろんフォロワー数が多ければ(フォロワー買って水増ししてない場合は)フォロワー分だけリーチが獲得できるということになります。しかしユーザーにこういうイメージを持ってほしいとか、こういう行動を促したいといった場合にはそれができる限られたインフルエンサーを選定しなければなりませんし、他のインフルエンサーにまで影響を与えるインフルエンサーに依頼することができれば効果は非常に大きくなることが予想できます。「フォロワー数が多い人=影響力がある」わけではないということですね。
ちなみにインフルエンサーの影響力を知りたかったら、そのインフルエンサーのフォロワーとTwitterであればRT数、インスタであればどれくらいコメントがされているかを確認するといいよ。
本当のインフルエンサーはだれなのか?
うな丼ツイートもしていた田端さんが『ブランド人になれ!』という本のなかのエピソードで書いてたんですよね。正確ではないのですがKSFの説明でこのようなことを紹介していました。
各国のVOGUE編集長は自国VOGUEの地位を上げたいと考えている。あるときGUCCIのトム・フォードが『最近イケてるのはVOGUE JAPAN』と発言をした。すると世界的にVOGUE JAPANと編集長のステイタスが上がった。
ファッションや雑誌の編集というのは政治であってトップを落とすことがKSFであることを編集長はわかっていた。だから漫然といい雑誌を作るのではなくてトム・フォードにいいねと言わせることをイメージして雑誌を作っていた。
『ブランド人になれ』
要はKSF(キーサクセスファクター)を理解してそこを抑えろって話です。
Key Success Factorの略。主要成功要因。事業を成功させるための必要条件。 経営戦略を策定するうえでは、外部環境分析から事業におけるKSFを明確にし、内部環境分析から自社がKSFをいかに実現していくかという具体的な戦略立案につなげていく。
規模、技術力、顧客対応の迅速さなどKSFとなりえる要素はさまざまだが、業界で優位に戦っていくためには、KSFとなる要因について必要なだけの能力や資産を持っている必要がある。また、競争構造の変化により、KSFが変化する場合もある。
https://mba.globis.ac.jp/about_mba/glossary/detail-11642.html
ファッションや雑誌のような誰かがいいと言ったらみんなそれに従うというような業界やサービスに限らず、このような現象があらゆるサービスに拡がっているのではないかと感じます。
SNSにおける拡がりを事前に計算するのってかなり難易度が高いと思うのですがマーケティングにソーシャルやインフルエンサーを組み込むのであれば、フォロワーの数ではなくどれだけ人の行動を促進させるかとどれだけネタ元になるようなインフルエンサーにアプローチできるかを考えるといいんじゃないかと思います。その点でインフルエンサーに影響を与えることができるインフルエンサーというのは最強じゃないですか。商品やサービスと合致したこのようなインフルエンサーはまずまずのインフルエンサー100人使うくらい意味があるんですよね。
最近のインフルエンサーマーケティング界隈でいえば、フォロワー数がまずまずのそれなりのインフルエンサー100人に商品を配るのではなく、商品やサービスと合致した本当に影響力のあるインフルエンサー1人と組んだほうが効果あるんじゃないかなとそんな座組を考えているところです。
↓『ブランド人になれ!』とうなぎをどうぞ。↓