半世紀も前からグレイトフル・デッドはファンベースマーケティングを取り入れていた
- 作者: デイヴィッド・ミーアマン・スコット,ブライアン・ハリガン,糸井重里,渡辺由佳里
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2011/12/08
- メディア: 単行本
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グレイトフル・デッドは今から40年以上も前にアメリカで活躍していたバンドらしいんですが聞いたことがなかったです。でもこのバンドのユニークだった点は、40年以上前の当時からライブの音源を録音するのはOK、バンド関連の商品を作って販売してもOKという現代の音楽業界でもまだ浸透していないやり方を取り入れていたということです。
このグレイトフル・デッドと『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』からマーケティング的な部分で学べることは多くあり、2011年に発売されている本なんですが、今読んでもまったく古くない本です。今マーケティング界隈で常識となっているようなフリーミアムやファンベース的なものは相当昔からあったし、それで大成功しているバンドがあったということです。『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』で気になったことをいくつかまとめてみました。
グレイトフル・デッドのフリーミアムとマネタイズ
グレイトフル・デッドはライブをテープに録音して個人で聞いたり知り合いにあげることも許可していました。これはレコードを売って稼ぐというのが収益のモデルだった時代の常識とは正反対です。しかし彼らは録音を許可し、音源を無料配布することでリーチを獲得し、ライブやより品質の高いリマスター版で収益を上げました。
グレイトフル・デッドの成功のポイントはファンによって作られるコミュニティがありました。グレイトフル・デッドのファンであるということと考え方に共感するコミュニティであり、決して演奏や歌がうまいことだけが理由で集まっているのではありません。テレビが強かった時代の音楽というのは「みんなが聞いているものがいい」的な考え方だったような気がしますが、空間やコミュニティとしての音楽をこんな時代にやっていたというのは驚きです。最近は国内でもサロン的なものが流行し始めていますが、新しい概念でもまったくなく、大昔から自然にあったものなんですね。
バイラルのポイントは濃いファン
あの時代はネットがありませんので、音楽を広めるには人から人への口コミが重要です。そういった意味で音源を公開するというのはかなりの効果がありました。
口コミが自然に広がっていく様子を伝染病の拡散になぞらえてバイラルと言うことがありますが、コンテンツがバイラルするかどうかは疫学では「基本再生産数」という数字で表されます。コンテンツを受け取った10人が少なくとも誰か1人に転送をすればまた10人にコンテンツが届けられます。これを繰り返すことで情報は自然と拡散していきます。TwitterなどのSNSであれば転送が一瞬に数百人数千人にされることになります。
ここでポイントなのは「転送・リツイート・おすすめをしたいコンテンツか?」です。全員が誰かにおすすめするコンテンツである必要はまったくなく、それよりも少数の人が確実におすすめをしたいコンテンツであることのほうが重要です。「Twitterを使って拡散させたい」という企業からの問い合わせや相談が2019年になっても存在します。その前に「それは誰かの役に立つものなのか?」「誰かにおすすめしたくなるものなのか?」を考えた人だけが「SNSで拡散」を考えればいいんじゃないでしょうか。
好きなことを仕事にして時間を使うべき?
グレイトフル・デッドが支持され成功した理由は彼らの音楽に加え、考え方やコミュニティをうまく形成できたことである、とこの本では説明しています。グレイトフル・デッド自信がが長期的な売上を計画してこういったシステムやコミュニティを戦略的に作っていたのかはわかりません。しかし彼らが自分たちの音楽を本当に好きだったということは予想できます。短期的な収益を考えれば他のバンドがやっているようにレコードを売って稼いだ方がよかったでしょう。でも彼らはレコードを売って稼ぐことはしませんでした。自分たちの音楽を知ってもらうための活動という逆のアプローチをとることによって、結果的にファンやコミュニティが作られました。
ネットがこれだけ発達している現代では、少なくて濃いファンに情報を届けることやコミュニティを形成することは、グレイトフル・デッドの時代よりも100万倍簡単になっているのかもしれません。それでもできないのは自分たちが独自のポジションをとれていないことや、小さいマーケットに参入することに勇気が足りないからなのかもしれません。
個性を取り入れよう、退屈なコンテンツを外そう、独自のものを目指そう
特徴のない代替可能な商品やサービスの提供に力を発揮できる人は多くありません。そうではなくせっかくこの時代にいるのだから、少数の人にでも強い影響を与えることに自分の人生を使っていければなと思った次第です。
- 作者: デイヴィッド・ミーアマン・スコット,ブライアン・ハリガン,糸井重里,渡辺由佳里
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