お金がなくなっても経済は学ぶ必要があるー『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』【書評】
財政破綻当時のギリシャの財務大臣が本を書くというだけでおもしろいのに、歴史書や回顧録的なものではなくて「経済とは」について書いているという点でさらに興味を惹かれた。
算出できない価値
この本では価値を値段が付けられない「経験価値」と値段が付けられる「交換価値(市場価格)」に分けて説明をしている。現在の資本主義社会では金額で表せる「交換価値(市場価格)」が重視されていて、それは資本主義が人間の”欲”をベースに成り立っているものなのでそれは自然なことでもある。
『幸せとお金の経済学』では財を、他人が何を持っているかどうかとは関係なく、それ自体に価値があり喜びを得ることができる「非地位財」と他人との比較優位によってはじめて価値の生まれる「地位財」に分けたがそれに近しいかもしれない。
金が好きだけど金が稼げない不幸
日本人ってお金が好きですよね。仕事の話をすれば仕事の内容よりも収入が気になってしまう人が多いし、女性が彼氏や旦那の職業を探ったりするのは収入を予想するためですよね?
そんなにお金が好きなのにお金が稼げないってのはめちゃくちゃ不幸なんじゃないかと感じた。ここ数十年お金は増えていないしむしろ減っているくらいなんですよね。生産性が低すぎるのは業界構造のせいでもあるし個人のせいでもあるのですが、お金が好きなのにお金を稼ぐ工夫はしない、お金を持っている人を妬んで引きずり降ろそうとするという結構厳しめな人種かもしれないですよね。
転職のマーケットでも年収が重要視され、結婚でも収入や職業で絞り込みをするんですよね?計測できる(マーケットで価格がつく)ものばかりが判断の基準になってしまうと永遠に幸せにはならない気がする。自分はなにがいいと思うのか?なにに価値を置くのか?を認識しないと、他人の比較でしか幸せを感じることのできない生き物になってしまいそうだ。
参考にした本
そんなことを『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』を読みながら考えた。この本は経済学の教科書のように、需要曲線と供給曲線がの交点が競争均衡で価格が決まるうんぬんかんぬんみたいな本ではまったくない。資本主義の起源からマーケット、借金と利子とは、集団心理、金融の本質といった話をわかりやすく話しかける本である。
競争をして金に換算できるものだけを追い続ける現在の資本主義をこのまま進めていいのだろうか?と問いかけられるような一冊だった。