失敗からは学べることはないのか?『シンプルに考える』森川亮

- 作者: 森川亮
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2015/05/29
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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元LINE CEO森川さんがLINE退職後C CHANNELに行く前に書かれた本。結構前に書かれた本だけど、いつか読もうと買ったまま押入れの中に入っていたので久しぶりに取り出してみた。
シンプルな組織とか効率的な組織についていろいろ考えていたところだったので内容も1〜2時間でサクッと読めるものなので気分転換におすすめ。本書で説明する森川さんがLINE時代に意識していた内容は下記。
戦わない
ビジョンはいらない
計画はいらない
情報共有はしない
偉い人はいらない
モチベーションは上げない
成功は捨て続ける
差別化は狙わない
イノベーションは目指さない
経営は管理ではない
このなかで気になった点をいくつかピックアップ
失敗礼賛文化への疑問
昨今のベンチャー界隈では失敗は資産だとか早く失敗するのがよい的な文化があるのですが、これも勘違いしちゃいけないです。森川さんはその点にこのように言及しています。
失敗してもいいという態度はおかしい。失敗しないための最善を尽くして確信が持てるまで考え抜く
「失敗が悪」ではなく「失敗しないための努力が不足している場合において失敗は悪」ということです。小さなもの含めたらすべて成功するってのはあり得ないわけで、「めちゃくちゃ考えた上での失敗には価値がある」(かも)しれないということです。
実は失敗から学べることはあまりないってのはいろんなところで言われていて、この記事とか『ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか』でピーター・ティールも言ってるんですね。
ほぼ日CFO「失敗からは学べない」マッキンゼー時代の突然の退職勧告を振り返る – ログミー
ピーター・ティールさんが「失敗からは本当には学ぶことはできない」「成功からしか学べない」と書いておられて、私は本当にそうだなと思っています。成功ってけっこう大変なことなので、うまくいくのに大事な要因が5つあるとするじゃないですか。5つ全部おさえないと成功にならないわけです。1つでも外したら失敗なわけですよ。
そうすると、失敗経験だけだと「なんで失敗したのかな」は本当にはわからない。なんかこうかなっていう自分なりの仮説とかはあるけども、本当にはわからない。成功してみて「この5つをすべて押さえると初めて成功なのね」とわかった上で、その失敗経験と照らして初めて「これがいけなかったんだ」とわかります。

- 作者: ピーター・ティール,ブレイク・マスターズ,瀧本哲史,関美和
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2014/09/25
- メディア: 単行本
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失敗から学ぶとすると成功までに数千数万の失敗をしなければいけないことになるんですよね。そうじゃなくて避けられる失敗は最初から避け、どうしても判断できないことは思い切って意思決定をするというのがよさそうです。
最近の会社のスタンダード
LINEを伸ばすためにやっていた文化や制度の紹介もいくつかしているんですが、そのなかには最近組織文化や人事戦略で話題になることが多いNetflixに近いものもありました。
年功序列ではない。提供する価値によって給与を決めることでやる人が報われる会社にする
そうだよね。長くやってる人はその分だけ貰うべきだって自然に考えちゃうんですけど、それって20年前にあなたが殺したかったおっさんですからね。優秀な人(ハイパフォーマー)をどれだけ惹きつけてどれだけ働きやすくするかってのが今までのみんなで仲良くの文化と大きく変化している点ですね。どの職種においても人間ひとりが生み出す価値の差が拡がっているのは明らか。過去の経験が否定されるのではなくて、価値を産まない経験は評価されないということです。
率直にものを伝えないのは衝突を避け自分を傷つけたくないから。正しい目的を達成するために必要なことであれば自分がどう思われようが率直に伝えるのが真摯な姿勢
年長者とか上位役職者の意見が基本的には正しいという勘違いも改めなくちゃ危険です。
またこの本のなかに書かれている「自分の正しさではなくユーザーのために議論する」とかもNetflixの文化と近いものがあります。

- 作者: パティ・マッコード,櫻井祐子
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2018/08/17
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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戦略と組織で悩む人へ
文化も人事戦略もこれが絶対に正しいというものはないので、その組織の目的によるところが大きいのが事実。特にネット関連業界におけるスピード感においてはこのあたりの組織の考え方は今後のスタンダードになっていくんじゃないでしょうか。時代に合わせてアップデートしないと気がついたら老害になっていますからね(なりかけ)

- 作者: 森川亮
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