【読んでみた】「インサイドボックス究極の創造的思考法」【書評】
- 作者: ドリューボイド,ジェイコブゴールデンバーグ,Drew Boyd,Jacob Goldenberg,池村千秋
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2014/05/15
- メディア: 単行本
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画期的な発想や発明は、枠の外(アウトサイド・ボックス)で考えて初めてものにできる、というのがこれまでのビジネス本や自己啓発本の定説でした。ところがコロンビア大学ビジネススクールのゴールデンバーグ教授と、P&Gなどのメーカーでイノベーションを指導してきたボイド氏が、実際に歴史上のイノベーションを400例以上研究したところ、それはまったくの逆だ、ということが判明したのです。
大きなブレイクスルーは、実は「制約の中」(インサイド・ボックス)で考え抜くことで生まれる――この意外な事実を豊富な実例をもとに立証していきます。
少し前に買った本なんですがいつもの通りメルカリに出品しておいたら購入されたので急いで読んでみた。タイトルなどからはどんな本なのかいまいちわからないし、誰かのブログとか記事読んで買ったんだろうけど正直なぜ購入したのか正確なところはわからない。だけど買ったということは何かしら学べるなと思うところを感じたからなわけで、とりあえず2時間くらいでサクッと読んでみました。なんか見た目とかデザインからは固い本に見えるけど内容は全くそんなことはなくて、創造性やイノベーションは習得できるという主題をベースに、そこに必要なテクニックやそれを裏付ける事例を紹介していくという本。
僕は想像力とかイノベーションを生み出すような能力って自分に不足してるなーということで買ったんだと思います。「イノベーションを生まなくちゃ」とか「変わった提案をしたい」などと考えているけど自分にはそんな天才ではないなと悩んでいる人なんかにはとてもいい本なんじゃないかと感じましたね。
「インサイドボックス」とは?概要は?
タイトルで思考法の本なんだなということはわかりますが、インサイドボックスとだけ言われてもまだわかりにくいです。これはどういうことかと言うと、今までや現在でも創造性を発揮したりイノベーションを生み出すには既存の概念にとらわれない【箱の外】で考える必要があるというのが主流の考え方な気がします。しかしこの本で言いたいことは創造性は【箱の中】にあり、イノベーションは制約の中にあるということなんです。またこれらはテクニックなので天才である必要はまったくないということなので、これなら凡人でも安心です。
これまでは
- 創造性はパターン化できない
- 枠の外(アウトサイド)で考えないとイノベーションは生まれない
と考えられていたことを、この本の著者であるジェイコブとドリューは
- 創造性は一定のパターンから出てくる
- 枠の中(インサイド)で考えればイノベーションが素早く生まれる
という結論にたどり着きました。創造性を発揮するためには枠の外(アウトサイドボックス)に出てものを考えなくてはならないという、創造性に関する最強の固定観念に異を唱え、現実離れしたことを考えたりアイデアの女神が降臨するのを待つより、問題や状況の内側に目を向け選択肢を広げるのではなく制約したほうがうまくいくというのが主題です。
ブレーンストーミングに効果がないのは証明済み
少し話は逸れますが、アイデアを生み出すにはひとりで考えるのと複数人で考えるのはどちらがいいのでしょうか?アイデアを生み出そうと言うと「ブレストしよう!」とブレーンストーミングを始める人や組織がありますが、ブレーンストーミングに効果がないことは多くの実験で証明済みです。ブレーンストーミングと同じ人数の人たちが互いに接触せずに問題を検討する場合とを比較してわかったことは下記のような内容だそうです。
- ブレインストーミングを行ったグループが、同じ人数の人たちがそれぞれ1人で考えたグループより大きな成果をあげるということはない。
- ブレインストーミングを行ったグループは、個人単位で考えたグループに比べて、生み出すアイデアの数が少ない
- 生み出されたアイデアの質や創造性は、ブレインストーミングをおこなったグループのほうが低い
- 人数が多ければ多いほど好ましいという常識に反し、ブレインストーミングに最適な人数は4人である
やっぱそうですよね、、、
一石二鳥のテクニックがおもしろい
本書ではイノベーションを生み出す5つのテクニックとその中身を詳しく説明しているのですが、個人的に面白いのは一石二鳥のテクニックだと感じました。本のなかで出てきた例を要約して紹介します。
“とある人物Aが以前にも宿泊したことのある高級ホテルのフロントでチェックインのための受付を行いました。するとフロントは「A様、いつもご利用ありがとうございます。」とAに挨拶をしました。Aはフロントが自分が以前に宿泊したことを覚えていたことに感動しフロントの対応力とサービスに感動しました。”
こういうのはよくあるおもてなし的な文脈で語られる内容ですよね。これに感動したAは自社でもこういうサービスを導入しようと思い、アイデアとして顔認証システムを利用することで既存客と新規客を瞬時に判別し対応を使い分けるということを思いついたそうなんです。でも導入や維持のコストは数千万〜数億がかかることは容易に予想できます。この話には続きがあります。
“実はこのホテルのフロントはお客様の顔と名前を覚えるようなことはしていませんでした。さらに顔認証システムのようなものも導入していません。どうやって過去に宿泊したことのある客かを判断したかというと、ポイントはタクシーの運転手でした。タクシーの運転手が客を乗せてホテルに向かう運転中に、このホテルに宿泊したことがあるかを雑談から聞き出すという仕組みとなっていました。運転手は荷物をフロントに渡す際にそれを伝え対価として1ドルを受け取りました。”
一石二鳥のテクニックには下記のようなものであり、タクシーの運転手に顔を覚えるという機能を担わせるおもしろい例です。
- 外部の要素に製品やサービス、プロセスがすでに果たしている機能のいずれかを移す
- 内部の要素に製品やサービス、プロセスがすでに果たしている機能のいずれか、もしくはまだ果たしていない機能を新たに担わせる
- 内部の要素に、それまで外部の要素が担ってきた機能を担わせる
テクニックを活用するために
世の中のイノベーションを見てみると極端に突飛な思考がアイデアを生み出しているように見えますしそういうのに憧れがちです。でも実は人類が何千年も用いてきた思考パターンを利用すれば誰でも創造性を発揮できるということは普通の人の励みになります。
読みながらテクニックを利用するにあたって大事なことはサービスやプロセスを分解することと詳しく把握することなのではないかと考えました。どんなテクニックを使うにもまずはどういう構造やプロセスであり要素があるのかを正しく理解する観察力が重要そうです。
おもしろい製品やマーケティングを見かけたときに、「これはどういう点で革新的なのか?」「イノベーションの類型にするとどれなのか?」を考えるきっかけができたという点で役に立つ本でした。
- 作者: ドリューボイド,ジェイコブゴールデンバーグ,Drew Boyd,Jacob Goldenberg,池村千秋
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2014/05/15
- メディア: 単行本
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